僕の欲しい君の薬指



どの面下げてお見舞いに行こうとしてるんだ。そう揶揄される覚悟で彼の元へ赴くつもりだった。あの子と真剣に向き合う決意が漸く固まったというのに、こうなってしまっては所詮一般人に過ぎない私はその場で足踏みをする事しかできない。


せめて天糸君の傍に居たかったのに。例えあの子に「もう要らない」と厭われる結果になっても、ちゃんと彼にこの感情を告白するつもりだったのに。待つ事しかできないなんて、もどかしくて狂ってしまいそうだ。



私とあの子は、近い様で果てしなく遠い。これが現実なのだ。お前は分不相応な恋路に走ろうとしていると理解しているのかと、問われている気分になる。


あの子を愛すると誓うと云う事は、この先も似た様な困難に幾度となく遭遇すると云う事を示唆している。もしかすると、こんなもどかしさなんて序の口なのかもしれない。



「幸い明日は俺と綺夏はオフで新曲の振り付け練習をする予定だ。天の見舞いに行ってちゃんとあいつの容態を月弓に知らせる。だから、心配する気持ちも分かるがあいつを信じて待ってやれ」



何処までも思慮深い珠々さんの発言に、泣きそうな感情を堪えてコクコクと頷いた。


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