僕の欲しい君の薬指
「月弓ちゃん」
寝る支度を整えて居候させて頂いている部屋のドアノブに手を掛けた刹那、廊下の奥から名前を呼ばれて顔を上げた。部屋に繋がる扉が並んでいる長い廊下。そこに佇んでいる綺夏さんと視線が絡む。
「どうかしましたか?」
恐らくお風呂上りなのだろう。わしゃわしゃとタオルで髪を拭いながら距離を縮めるように歩み寄る彼に、私は首を傾けた。
言伝でもあるのだろうか。相手が私を呼び止めた理由を自分なりに探していると、不意に彼が手を伸ばして私の首筋を撫でた。どう云う意図で私に触れたのだろうか、そんな思考を巡らせるよりも先に私の身体は彼に引き寄せられていた。