僕の欲しい君の薬指
どう頑張ったって、私にはApisの様な輝きは放てないだろう。やはり私は天糸君に釣り合わないのではないかと陰鬱な思考を幾度となく巡らせた。
だけど、あの子が私と違って美人で可憐で愛らしい子を愛している姿を想像すれば、とても祝福できそうになかった。寧ろ、薄汚れた嫉妬の念が募るばかりだった。
どうしても私だけがあの子に愛されたい。他の人なんて耐えられない。私だけがあの子を愛したい。どんなに思案しても、やっぱり私はその結論にしか辿り着けなかった。
若干眠気の残る目を擦りながら、私は目前にいる二人に向かって頬を緩めて見せた。
「美味しいご飯を頂いているお礼にもなりませんが、食器洗いくらいさせて下さい」
「留守番頼む。天の様子も帰って来たら伝える」
「ありがとうございます、宜しくお願いします」
帽子を深く被ってマスクで顔を隠した彼等が、玄関扉を開けて家を後にする。バタンと音を立てて扉が閉まったのを機に、手を振っていた私の元へ静けさが訪れた。
寝癖を直す様に手櫛で大雑把に髪を梳いてから、高い位置で一つに纏めて結い上げる。「よし、食器洗いをしてから勉強しよう」珠々さんと綺夏さんの甘い残り香が漂う廊下に、自らの独り言が溶けて消えた。