僕の欲しい君の薬指



天糸君の見せた明白な反抗に、珠々さんの眉がピクピクと痙攣している。このまま大激突して喧嘩になってしまうのではないかと懸念してハラハラする私の胸中をまるで察してくれない彼が、私の身体をより一層抱き寄せて見せびらかす様に頬へキスをする。


幾ら頬とは云え、人前で口付けをされてしまった私の体温は急上昇。頬に付着した彼の血よりも全身が赤くなってしまいそうだ。



「珠々、月弓ちゃんは僕だけの物になったよ」

「そうらしいな。月弓とお前の顔を見れば分かる」

「今回だけは見逃してあげるけど、これから先、万が一珠々が月弓ちゃんに手出ししようものなら僕がすぐに殺すからね」

「恐ぇな。まぁ、せいぜいお前にバレねぇ様に月弓にアプローチするわ」

「あ?」

「冗談だ。そんな事よりお前はさっさとシャワーに入って病院に世話になる準備をしろ、天。無理すんなって言われてんのに盛大に無理してどうすんだ」

「……」

「マネージャーが来る前に片付ける方が得策だぞ」

「煩い分かってるもん!!!」



いかにも不服そうに唇を尖らせて渋々立ち上がった天糸君を見て、ニヤニヤと悪戯な笑みをぶら下げる珠々さんは「やれやれ、反抗期の子を持つと大変だな」と小さく零した。


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