僕の欲しい君の薬指


全くこれっぽちも聴いた覚えのない話の展開に、目玉が飛び出て転げ落ちそうになる。


天糸君を病院に送った後に、私が居候させて貰っているこの家に再び現れたマネージャーさんから「大切なお話があります」とは確かに言われたけれど、まさかこんなに重要な話だとは想像もしていなかった。



「え?月弓ちゃん本当に何も知らなかったの?」



口をあんぐりと開けて硬直している私に質問を投げた綺夏さんに、コクンと首を縦に振って答える。



「天の奴、住んでもない癖にこの階の部屋を借りてずーっと家賃払ってんの。そんで月弓が住んでるマンションにも部屋を借りて、あいつ自身はそこで生活してたから何でそんな煩わしい事してんだってApisのメンバー皆疑問に思ってたけど、今なら理由が分かる。あの狂人、ただただ月弓を追い掛けてただけなんだな」



包みを剥いて、チョコレートを口に含んだ珠々さんが意地悪な微笑をぶら下げている。高校生にして二部屋分のマンションの家賃を払い続けていた彼の経済力に感心する余裕もなく、私は次々と明かされる驚愕の事実に驚くばかり。


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