僕の欲しい君の薬指
私の知らない所で、天糸君はここまでしてくれていたんだね。
本当はセキュリティーが万全の高級マンションに住んだ方がずっと安全なのに、それを捨ててまで私と同じマンションに住んでいた彼の底のない執着心と情愛に心が擽ったくなる。
自分の掌に乗っている真新しい鍵へ視線を落として、苦笑を滲ませた。
「やっぱり、私じゃ全然敵わなかったね」
握っている鍵が随分と重いのは、彼の情愛がとても重いからに違いない。ほんの少し前までは、この重さに圧し潰されて苦しくて苦しくて仕方がなかった。だけどもう、その苦しみも含めて愛おしい。
彼の執拗な愛情表現すらいじらしく感じてしまう。この変化こそが、彼の毒にどっぷりと浸かって、深く深く沈んでしまった何よりの証拠だろう。