僕の欲しい君の薬指


鍵を手渡された経緯は理解したのは良いけれど、まだ最大の疑問が残っている。どうしてわざわざこのタイミングで、しかも天糸君本人からではなくマネージャーさん経由で私の元に鍵がやって来たのだろうか。


眉間に皺を寄せて首を捻った私の心の声が聞こえたのか、冷えた麦茶をゴクゴクと一気に飲み干したマネージャーさんが口を開いた。



「と云う訳で、明後日には引っ越し業者さんが月弓さんの住んでいらっしゃるマンションに来る手筈になっているらしいので、宜しくお願いします。」



溌剌とした口調で放たれた内容は私のスケジュール帳にはまるで記載されていない予定で、私は思わず己の耳を疑った。


「そ、そんな急に言われても…」

「月弓ちゃんのお部屋は既に片付けてあるし、違約金も支払い済みだから心配しないでねと天からの伝言も預かってます」



まさか、そんなはずがない。マネージャーさんの言葉に対して私はそう思った。だって、本当に彼が私の部屋を既に片付けているのだとしたら、あの子は最初からこうなる事を知っていたと云う事になる。


そんな事があるはずがない。きっと、マネージャーさんが天糸君の伝言を聞き間違えたのだろう。そう結論付けた私は翌日、住み慣れた自分のマンションの一室を訪れて驚いた。


< 243 / 259 >

この作品をシェア

pagetop