その涙が、やさしい雨に変わるまで
そんな三琴の心情など構うことなく、瑞樹は管理者の顔のまま、あることを切り出してきた。
「有給のことは別にして、ひとつ気になることがある」
「はい、何でしょうか?」
秘書時代の癖で、三琴は瑞樹の目をみて即答してしまった。同時に背筋も伸びる。職業病ここに極まり、がまだまだ健在であった。
前回の呼び出しは、三琴にとっては予想外の業務態度の追及となった。その経験から、またここで同じような非難が浴びせられるかもしれない。三琴は自分で自分に叱咤する、何がきてもしっかりしろと。
傘を抱いて「気をつけ!」の姿勢のまま、気持ちだけは負けないように、目力を込めて瑞樹をみた。
「松田さんは、まだ僕の知らないことがあるといいました。覚えていますか?」
三琴の決心した眼差しを受けて、瑞樹のほうも鋭い瞳となっていた。
――まだ僕の知らないことがあるといいました。覚えていますか?
(そんなこと、いったかしら?)
瑞樹に質問されて、三琴は悩む。はっきりと、それを覚えていない。
(あー、でも、いったのかな?)
真剣な表情の瑞樹をみれば、きっとその「知らないこと」なんて言葉を口にしていたのだろう。
(最後のほうは、もう感情的になりすぎて、よく覚えていないんだけど……いったとすれば……そんなの、決まってるじゃない!)
(付き合っていたときのことよ。一年経っても瑞樹さん、何も思い出さないし、私だって混乱させたくなかったから、いいたいのをずっと我慢していた)
(そうやっていたら、先にあなた、婚約しちゃったじゃないの!)
「有給のことは別にして、ひとつ気になることがある」
「はい、何でしょうか?」
秘書時代の癖で、三琴は瑞樹の目をみて即答してしまった。同時に背筋も伸びる。職業病ここに極まり、がまだまだ健在であった。
前回の呼び出しは、三琴にとっては予想外の業務態度の追及となった。その経験から、またここで同じような非難が浴びせられるかもしれない。三琴は自分で自分に叱咤する、何がきてもしっかりしろと。
傘を抱いて「気をつけ!」の姿勢のまま、気持ちだけは負けないように、目力を込めて瑞樹をみた。
「松田さんは、まだ僕の知らないことがあるといいました。覚えていますか?」
三琴の決心した眼差しを受けて、瑞樹のほうも鋭い瞳となっていた。
――まだ僕の知らないことがあるといいました。覚えていますか?
(そんなこと、いったかしら?)
瑞樹に質問されて、三琴は悩む。はっきりと、それを覚えていない。
(あー、でも、いったのかな?)
真剣な表情の瑞樹をみれば、きっとその「知らないこと」なんて言葉を口にしていたのだろう。
(最後のほうは、もう感情的になりすぎて、よく覚えていないんだけど……いったとすれば……そんなの、決まってるじゃない!)
(付き合っていたときのことよ。一年経っても瑞樹さん、何も思い出さないし、私だって混乱させたくなかったから、いいたいのをずっと我慢していた)
(そうやっていたら、先にあなた、婚約しちゃったじゃないの!)