その涙が、やさしい雨に変わるまで
「いいんじゃない、ありがたいファンだよ」
「えへへ、そうね。あのバンドはさぁ~、新曲はどれも変化があって飽きがこないし、でもその奥底にある彼らの神髄は不動で、うーん、もう、サイコーなのよ」
彩也子ほど推しているものは三琴にはないが、この情熱、わからないことはない。
このバンド、彩也子によると一方的にファンが黄色い声を上げているだけでないらしい。推しのほうだってその要望に答えてきめ細やかなファンサービスを提供しているとのこと。遠方のファンのために新曲プレリリースを配信で行うのがいい例だ。
推しとそのファンの間にある推しつ推されつのバランスが絶妙であれば、彩也子みたいな推し歴の長いファンが出来上がるのだろう。バンドとファンが無理のない距離感で上手に付き合っているなと、三琴は思う。
「というわけで、推しのためにそろそろ帰るぞ! 夕方のラッシュはひと段落ついた頃だし」
「そうね。あまり残業をするのもアレだし」
三琴の場合は、退職間近なので残業はもう割り振られてはいない。空になった紙コップを捨てて、ふたりは休憩スペースをあとにした。
「ああ、戻ってきた! 松田さん、社内便よ」
「?」
三琴と彩也子が総務部へ戻ると、三琴宛てに一通の封筒が届いていた。回覧板のように何回も使いまわされるその封筒には、簡単な表が糊付けされている。
そのテーブルの一番新しい差出人の欄には「秘書課 本多」と、受取人の欄には「総務部 松田」と書かれていた。
「えへへ、そうね。あのバンドはさぁ~、新曲はどれも変化があって飽きがこないし、でもその奥底にある彼らの神髄は不動で、うーん、もう、サイコーなのよ」
彩也子ほど推しているものは三琴にはないが、この情熱、わからないことはない。
このバンド、彩也子によると一方的にファンが黄色い声を上げているだけでないらしい。推しのほうだってその要望に答えてきめ細やかなファンサービスを提供しているとのこと。遠方のファンのために新曲プレリリースを配信で行うのがいい例だ。
推しとそのファンの間にある推しつ推されつのバランスが絶妙であれば、彩也子みたいな推し歴の長いファンが出来上がるのだろう。バンドとファンが無理のない距離感で上手に付き合っているなと、三琴は思う。
「というわけで、推しのためにそろそろ帰るぞ! 夕方のラッシュはひと段落ついた頃だし」
「そうね。あまり残業をするのもアレだし」
三琴の場合は、退職間近なので残業はもう割り振られてはいない。空になった紙コップを捨てて、ふたりは休憩スペースをあとにした。
「ああ、戻ってきた! 松田さん、社内便よ」
「?」
三琴と彩也子が総務部へ戻ると、三琴宛てに一通の封筒が届いていた。回覧板のように何回も使いまわされるその封筒には、簡単な表が糊付けされている。
そのテーブルの一番新しい差出人の欄には「秘書課 本多」と、受取人の欄には「総務部 松田」と書かれていた。