その涙が、やさしい雨に変わるまで
(本多さんから社内便?)
触れると、硬い感触がある。中身を取り出せば封印された手のひらサイズの薄い包みで、『デスクの中の忘れ物』と記された付箋紙が貼ってある。
「あらら、松田さん、うっかりね」
「みたい。おかしいな~、きちんとみたつもりだったんだけど」
「奥のほうで落ちてたんじゃない? それ、薄いし」
私物だから持って帰っても問題ないだろうと、そのまま鞄へ放り込んだ。
彩也子とともに退社して、三琴は真っ直ぐに帰宅する。自室に戻ってからは、まず風呂に入った。雨の帰り道で、足元がすっかり濡れてしまったからだ。
入浴後は、作り置きおかずと缶酎ハイで夕食にする。テレビをつければニュース番組はなく、バラエティー番組ばかりだ。消すのもなんだか億劫だったので、番組の笑い声をそのまま流しておいた。
食事が終われば、ほどよく腹が膨れて、酔いも回っている。番組の笑い声が、ひとりの食卓の孤独を紛らわす。
そうなれば、考えるのはやはり瑞樹のことだ。
(今日、瑞樹さんとバッタリ会っちゃった)
(相変わらずのスマートな物腰だったなぁ~)
(鍵を取られたときは、どうしようかと思ったけど)
副社長室前室での口喧嘩の続きが社員専用出入り口ではじまったらどうしようかと思ったが、それは杞憂に終わった。ここは、お互いがきちんと状況を判断できる大人であった。
「あ、そうだ!」
瑞樹のことを思い出した弾みで、本多からの社内便に気がついた。鞄の中に入れたままである。
忘れ物なんて全然覚えがないから、三琴は不思議でならない。鞄から取り出して、しみじみとみた。
触れると、硬い感触がある。中身を取り出せば封印された手のひらサイズの薄い包みで、『デスクの中の忘れ物』と記された付箋紙が貼ってある。
「あらら、松田さん、うっかりね」
「みたい。おかしいな~、きちんとみたつもりだったんだけど」
「奥のほうで落ちてたんじゃない? それ、薄いし」
私物だから持って帰っても問題ないだろうと、そのまま鞄へ放り込んだ。
彩也子とともに退社して、三琴は真っ直ぐに帰宅する。自室に戻ってからは、まず風呂に入った。雨の帰り道で、足元がすっかり濡れてしまったからだ。
入浴後は、作り置きおかずと缶酎ハイで夕食にする。テレビをつければニュース番組はなく、バラエティー番組ばかりだ。消すのもなんだか億劫だったので、番組の笑い声をそのまま流しておいた。
食事が終われば、ほどよく腹が膨れて、酔いも回っている。番組の笑い声が、ひとりの食卓の孤独を紛らわす。
そうなれば、考えるのはやはり瑞樹のことだ。
(今日、瑞樹さんとバッタリ会っちゃった)
(相変わらずのスマートな物腰だったなぁ~)
(鍵を取られたときは、どうしようかと思ったけど)
副社長室前室での口喧嘩の続きが社員専用出入り口ではじまったらどうしようかと思ったが、それは杞憂に終わった。ここは、お互いがきちんと状況を判断できる大人であった。
「あ、そうだ!」
瑞樹のことを思い出した弾みで、本多からの社内便に気がついた。鞄の中に入れたままである。
忘れ物なんて全然覚えがないから、三琴は不思議でならない。鞄から取り出して、しみじみとみた。