その涙が、やさしい雨に変わるまで
(そこはもしかしたら、子会社社長となって出ていくかもしれないし、別組織ができてそこのトップになるかもしれないし)
(今の日本本社は大きくなりすぎた感があるから、分社化すればポストは増えそう。あの規模だもん、ふたつに分けても充分大きな会社だよ)
菱刈の告げる『黒澤グループ』の未来云々のせいで、0号案の確認の途中でそんなことを三琴は考えてしまう。これこそ、もう辞めていく会社のことである、深く思案しなくてもいいのにだ。
「あれ? ここで切れてる」
企画原案はヨーロッパ現地のマーケットレポート、それに対する日本本社の対応の可不可、実現へ向けての問題点とその対応、実施時期等々と、事細かに意見交換が続いていた。
それがとある時点から、ぷつりと切れた。これで三琴の思考の流れも止められて、思わず声が出たのだった。
――黒澤くん、いろいろとこちらへ質問してきては熱心に企画を練っていたのに、しばらくコンタクトがないなと思ったら、それきりです。今日の会議でも、僕の顔をみたら思い出すかなと期待したけど、全然だった。
菱刈の言葉も思い出す。瑞樹の態度が豹変したのは、ここからなのだ。
そしてその直前の日付をみて、三琴は腑に落ちた。
それは、瑞樹が転落事故に遭った日の一週間前。菱刈の案件も、瑞樹の記憶喪失の犠牲となっていたのだった。
(今の日本本社は大きくなりすぎた感があるから、分社化すればポストは増えそう。あの規模だもん、ふたつに分けても充分大きな会社だよ)
菱刈の告げる『黒澤グループ』の未来云々のせいで、0号案の確認の途中でそんなことを三琴は考えてしまう。これこそ、もう辞めていく会社のことである、深く思案しなくてもいいのにだ。
「あれ? ここで切れてる」
企画原案はヨーロッパ現地のマーケットレポート、それに対する日本本社の対応の可不可、実現へ向けての問題点とその対応、実施時期等々と、事細かに意見交換が続いていた。
それがとある時点から、ぷつりと切れた。これで三琴の思考の流れも止められて、思わず声が出たのだった。
――黒澤くん、いろいろとこちらへ質問してきては熱心に企画を練っていたのに、しばらくコンタクトがないなと思ったら、それきりです。今日の会議でも、僕の顔をみたら思い出すかなと期待したけど、全然だった。
菱刈の言葉も思い出す。瑞樹の態度が豹変したのは、ここからなのだ。
そしてその直前の日付をみて、三琴は腑に落ちた。
それは、瑞樹が転落事故に遭った日の一週間前。菱刈の案件も、瑞樹の記憶喪失の犠牲となっていたのだった。