その涙が、やさしい雨に変わるまで
ビールで乾杯したあとほどなくして、料理がやってきた。
「日本に戻ってこられていたのですね。いつまで、こちらに?」
カジュアル居酒屋であれば、並ぶ料理は庶民的なもの。定番の焼き鳥の串を抜きながら、三琴は訊いた。
「今月いっぱい。時間がないって受付カウンターで揉めたけど、そこまでキュウキュウのスケジュールじゃないよ」
タコのから揚げにレモン汁をかけながら、軽い調子で脩也はいう。やはりあの「時間がない」は、演技だった。
瑞樹が御曹司であれば、瑞樹の兄の脩也だって御曹司である。
しかし海外生活の長い脩也は、待ってましたとばかりに御曹司をなげうって庶民的な日本食を頬張っていた。
「ニューヨークのグループ展に、今年も参加されたそうですね。おめでとうございます」
がつがつと食して皿を空にしていく脩也へ、三琴はまずお祝いを述べた。この情報は、三琴がここにくる直前に自分で調べたものだ。
このグループ展、なかなか権威のあるアメリカのフォトグラフ協会が主催している写真展で、毎年冬に開催されている。同時にこれは、協会が開催するコンクールの入選作品発表の場にもなっている。
有名協会が主催ということで、有り体にいえば、ここのコンクールに入選して作品が飾られると、フォトグラファーとして箔がつく。
このコンクールに脩也は三年連続入選し、グループ展ではもう『常連』メンバーといっていいレベルに到達していた。
そう、脩也は瑞樹の実兄で、黒澤グループの御曹司で、アメリカで活躍するフォトグラファーなのである。
コンクールに初入選したことは、本人の口からそれをきいた。兄を紹介するよと瑞樹に連れられて、脩也と会うことになったときのことである。自己紹介のあと、お互いの近況に話が飛び、コンクールの話になったのだった。
これは一年十ヶ月前のこと。瑞樹と付き合いはじめて四ヶ月たった頃のことだった。
「日本に戻ってこられていたのですね。いつまで、こちらに?」
カジュアル居酒屋であれば、並ぶ料理は庶民的なもの。定番の焼き鳥の串を抜きながら、三琴は訊いた。
「今月いっぱい。時間がないって受付カウンターで揉めたけど、そこまでキュウキュウのスケジュールじゃないよ」
タコのから揚げにレモン汁をかけながら、軽い調子で脩也はいう。やはりあの「時間がない」は、演技だった。
瑞樹が御曹司であれば、瑞樹の兄の脩也だって御曹司である。
しかし海外生活の長い脩也は、待ってましたとばかりに御曹司をなげうって庶民的な日本食を頬張っていた。
「ニューヨークのグループ展に、今年も参加されたそうですね。おめでとうございます」
がつがつと食して皿を空にしていく脩也へ、三琴はまずお祝いを述べた。この情報は、三琴がここにくる直前に自分で調べたものだ。
このグループ展、なかなか権威のあるアメリカのフォトグラフ協会が主催している写真展で、毎年冬に開催されている。同時にこれは、協会が開催するコンクールの入選作品発表の場にもなっている。
有名協会が主催ということで、有り体にいえば、ここのコンクールに入選して作品が飾られると、フォトグラファーとして箔がつく。
このコンクールに脩也は三年連続入選し、グループ展ではもう『常連』メンバーといっていいレベルに到達していた。
そう、脩也は瑞樹の実兄で、黒澤グループの御曹司で、アメリカで活躍するフォトグラファーなのである。
コンクールに初入選したことは、本人の口からそれをきいた。兄を紹介するよと瑞樹に連れられて、脩也と会うことになったときのことである。自己紹介のあと、お互いの近況に話が飛び、コンクールの話になったのだった。
これは一年十ヶ月前のこと。瑞樹と付き合いはじめて四ヶ月たった頃のことだった。