その涙が、やさしい雨に変わるまで
 ごめんなさい、その謝罪の言葉とともにスマートフォン不通話のことを説明しようとしたら、三琴は声が出なかった。
 さらに大粒の涙が、ぼたぼたと目からあふれ、料理の皿の間に落ちていく。

「松田ちゃん?」
「あ、あ、ご、ごめんな……さい」
「いや、いや、いや」

 あわてて三琴が取り繕うも、言葉に詰まり、先が続かない。言葉は出ないのに涙は逆で、一向におさまらない。無理して堪えようとすれば、しゃくりあげるばかりである。
 年上の貫禄で、はじめこそは泣く三琴にびっくりした脩也であったが、ここでもすぐに冷静に対応した。両手で目元を押さえる三琴にまだ使っていないおしぼりを渡し、追加オーダーを頼んだ。
 
「おねーさん、メニューにあるアイスクリーム、全種類ひとつずつ、持ってきて~」


 ***


 かくて、三琴はタクシーで帰宅する。
 夜の稼ぎ時になれば次々と予約客などがやってきて、店はずいぶんと賑やかになっていた。脩也が締めのデザートをたくさん頼んでしまえば、この客はお愛想なんだろうと店員から退場をほのめかされた。
 
 泣き出してしまった三琴はとっと家に帰りたかったし、脩也のほうも一応は夕食を済ませることができたので、アイスクリームをたらふく食べたあと素直にふたりは店をあとにした。

 普通なら店先で別れて電車で帰るところだが、脩也は三琴にそうはさせなかった。
 三琴としてもみっともない顔がなかなか戻らず、このまま電車に乗るのは嫌だった。さりげなく「タクシー乗り場はどこかなぁ~?」といって歩き出す脩也に従ったのだった。

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