上司の甘い復讐



それなのに、彼は鞄を持ち立ち上がる。

そしていつものように、無感情の声で告げる。


「お前、忘れたんじゃねぇよな?」


口を噤み翔太さんを見る私に、彼は近寄る。



ドキドキドキドキ……


近付くにつれ、鼓動が早 速くなる。

ここで仕事の話だったら心が折れると思い、


「す、すみません。

私はもう帰ろうかと……」


自分から切り出した。

すると彼はいつものようににこりともせず私を見たあと、耳元で囁く。


「瑞希、おいで」




翔太さんはずるい。

こうやって甘く優しくすると、私がフラフラついていってしまうことを知っている。

私は彼の思惑通り真っ赤になり、彼の後を追う。

私は彼に、狂わされっぱなしだ。


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