念願の婚約破棄された悪役令嬢は、なぜか廃嫡寸前の変人王子に執着される
そこまで言って、止まる。
念願の婚約破棄されたとはいえ、演技をやめて誰かに好感を抱かれては元の木阿弥だ。
「今日からあなたのお世話係に任命された、シャローラですわ。
この私がお世話して差し上げるんですから、光栄に思いなさい?」
高笑いしながら、思いっきり高圧的に言い放つ。
これで掴みはOK、間違ってもコーデリック王子が私に好意を抱くなんてないだろう。
――しかし。
「……今、シャローラと言ったか?」
「……はい?」
ゆらりと王子の身体が揺れ、びくりと怯えてしまう。
「お前はシャローラで間違いないんだな?」
前髪の陰で暗い顔の中、ビカーッと眼鏡だけが光り、彼の口からはフシューフシューと煙が吐き出されている……ように、私には見えた。
「は、はい。
間違いございませんが……?」
恐怖のあまり、反射的に王子に答えた次の瞬間。
……視界から王子が消えた。
状況を把握するのに少しかかったが、すぐにもの凄い跳躍力で飛び上がったのだと気づいた。
その軌道を目で追うより早く、彼が私の目の前に着地する。
さらにがしっと、両手を掴まれた。
「結婚しよう」
ぐいっと顔を近づけられ、背中が仰け反る。
さらに眼鏡の奥からキラキラした目が私を見つめていて、変な汗を掻いた。