念願の婚約破棄された悪役令嬢は、なぜか廃嫡寸前の変人王子に執着される
「えっ、あっ、その。
……私があなたなんかと、結婚するはずないでしょー!?」

少ししてバッチーンと痛そうな音が辺りに響き渡る。
あろうことかいっぱいいっぱいになった私は、コーデリック王子に平手打ちを喰らわせていた。

「あっ、えっと、……その」

今度はさっきまでとは違う、冷たい汗を掻く。
廃嫡寸前とはいえ、王族をひっぱたくなんて不敬を働いて、無事でいられるはずがない。
私だけならいいが、家族も巻き込んでバッドエンドになったらどうしよう。
王子は私に叩かれた頬を押さえ、黙っている。
落ち着かないまま彼の言葉を待った。

「はははっ、いってーな」

「……は?」

苛烈な断罪を想像していたのに、声を上げて実に豪快に王子が笑いだし、呆気にとられた。

「そんなに俺と結婚するのは嫌か?」

ひとしきり笑い終わり、王子の手が私の顔を自分のほうへと向かせる。
改めてみるとオーガスト王子よりもさらに背が高い。

「……嫌に決まっていますわ」

逃れるように思いっきり、視線を逸らした。

「そうか」

手が離れ、王子が僅かに笑う。
その淋しそうな顔に一瞬、胸がツキンと痛んだが。

「でも俺は、諦めないんだけどな」

ほっとしたのも束の間。
次の瞬間、不意打ちで王子の唇が重なっていた。

< 6 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop