念願の婚約破棄された悪役令嬢は、なぜか廃嫡寸前の変人王子に執着される
「……キ」

「キ?」

怒りでわなわなと身体が震える。
そんな私の顔を王子は怪訝そうにのぞき込んだ。

「キスとかしないでー!」

振り上げた手を私は、コーデリック王子に再び喰らわせた。


「シャローラのビンタは効くなー」

濡らしてきた布で真っ赤に腫れた両頬を冷やしながら、コーデリック王子は椅子に座ってへらへら笑っている。
二発もビンタを喰らって怒るどころか笑っているなんて、やはり彼は噂に違わぬ変人らしい。

「しっかし、キスくらいオーガストとしてるだろうに」

「オーガスト王子はあなたと違って紳士なので、しませんわ!」

速攻でコーデリック王子を非難した途端、さっきまで笑っていた王子の顔から笑みが消えた。

「お前をまったく理解せず、婚約破棄してくるようなヤツのほうがいいのか?」

もしかしてこれって、オーガスト王子にヤキモチを妬いているんだろうか。

「少なくとも無理矢理キスしてくる、コーデリック王子よりはマシですわ」

「ま、それはそうだな」

今度は豪快に王子は笑っている。
変人なのは間違いないが、私の知っているコーデリック王子像とはかけ離れていて、戸惑った。

とりあえずお茶くらいいいだろと、王子自らお茶を淹れてくれた。

「茶菓子はありませんの?」

< 7 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop