念願の婚約破棄された悪役令嬢は、なぜか廃嫡寸前の変人王子に執着される
「ほんとはうまいって思ってるんだろ」

明後日の方向を向き、王子はシャリシャリと林檎を食べている。

「思ってなどいませんわ」

答えながらも目が泳ぐ。
まさか、王子はこれが私の本心じゃないと気づいている?

「美味しかったと顔に書いてある。
人に嫌われるような態度も全部、演技だろ?」

ごくりと林檎を飲み込み、王子は真っ直ぐに私を見据えた。
この人はいったい、私のなにを知っているのだろう。
心臓がどくん、どくんと自己主張を繰り返し、先程、林檎で潤されたばかりの喉がからからに干上がる。

「……そんなこと、ありませんわ」

そう言いながらも伏せ目がちになり、斜め下を見てしまう。

「まあいい。
そんなふうに振る舞うのはなんか理由があるんだろうが、今は聞かないでおく」

ふっ、と薄く、王子が笑う。
それでその場の空気が緩み、内心ほっと胸を撫で下ろした。

「それで、だ」

お茶を一気に飲み干し、王子が私と向き直る。

「シャローラ。
俺と結婚してくれ」

長い前髪の陰になってどんな顔をしているのかはわからないが、その声は真剣だ。

「じょ、冗談ですわよね?」

きっと弟から婚約破棄された私をからかい、本気にしたところを嘲笑いたいだけ。
そうであってほしいと心の底から願う。

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