私、修道女になりたいのですが。。。 ー 悪役令嬢のささやかな野望?
「マリアちゃん、疲れた顔をしてるね。ゆっくり休んで」
 ルーカス様は私に目を向け、気遣うように声をかけると、部屋を後にする。
「あの、シャーロットはどうなるのでしょう?」
 アレックス様に義妹の処遇を尋ねると、彼は厳しい口調で言う。
「普通なら斬首刑だ」
 当然よね。シャーロットはこんな騒ぎを起こしたんだもの。
 彼女はなんの不自由もなく育った私が憎かったのだろう。
 彼女は市井育ち。辛いこともいっぱい経験したはずだ。だからこそ……。
「彼女には生きて罪を償ってほしいです」
 私に義妹の処遇を決める権利なんてない。それでも、言わずにはいられなかった。
「マリアならそう言うと思った。恐らく一生修道院で過ごすことになるだろう。あと、公爵も監督責任があるから、しばらく謹慎処分になると思う」
「そうですか」
 斬首刑に比べれば、かなり寛大な処罰といえよう。それでも苦い思いが胸に広がる。
「そう暗い顔をするな。彼女はもう手を汚さずに済むのだ。もっと前向きに考えろ」
 つくづくアレックス様は素晴らしいお方だと思う。私はそんな風に考えられないもの。
「はい。ありがとうございます」
「それにしても今日は大変な一日だったな。マリアが無事で本当によかった」
「アレックス様が現れる直前、この指輪が光ったんです」
 左手にはめた指輪を見つめながら伝えたら、アレックス様が私の手を握って指輪に触れてきた。
「マリアの危機を俺に知らせてくれたんだと思う。辺りが暗くて小屋の場所がわからなかったんだが、指輪の光のお陰で見つけることができた」
「そうだったんですね」
「指輪を預けていてよかったよ」
 アレックス様が私を抱きしめてきて、彼の背中に腕を回した。
「最近、マリアのお陰でわかったことがある。人ってこんなにあったかいんだな」
「私もアレックス様のお陰で知りました。こうしていると、安心するなって。不安が消えていくんです」
 きっとひとりでいたら、ブルブル震えていたに違いない。
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