さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
4.大人の本気ってこういうこと
『本当にオトナにされちゃったとはね~』

 雪成が電話越しにケラケラと笑う。

「ユキちゃん、言い方」

『長年の想い相手に初めてを貰ってもらった上にその彼に結婚を申し込まれたんでしょ。オールハッピーじゃない。で、速攻囲われ、同棲がスタートって……相当焦らせたのかしら。思っていた以上の成果が出たわね』

「ユキちゃん?」

 雪成の声がだんだん独り言のようになり、よく聞こえずに未来は聞き返す。

『ううん、なんでもー。で、未来は何がご不満なわけ?』

「不満というか、やっぱりこんな和くんの責任感に付けこむようなことダメだと思ってる」

 結乃は高い天井を見上げながら、電話の向こうの親友に本音を漏らした。

 時刻は夜の10時を過ぎようとしている。
 広い座面のダークブラウンの本革ソファーに腰掛けながら未来は事の顛末を雪成に電話で報告していた。

 和輝が暮らすここ、御茶ノ水のマンションに引っ越してきてから約2週間経つ。
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