別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
(顔を合わせずらいだろうなとは思っていたが、まさかシャワーを浴びている間に逃亡されるとは思わなかった)

《会社があるし先に家に帰ります。昨日のことは忘れてください。ありがとね!》

 空っぽになったベッドを前に未来からのメッセージを読んで和輝はこの上なく苦い笑いを零した。

『忘れてください、か。やはりそうきたか。生憎だが未来、俺は本気で君を手に入れることにしたから』

 忘れることなどできないし、逃がすつもりもない。多少汚い手も使ってやる。

 吹っ切れた和輝は身体を重ねたことを理由に交際を迫ろうと決めた。

 翌日彼女の上司である課長の佐野と打ち合わせが入っていたのはたまたまだった。
 未来と彼女の同期の尾形が話す声が聞こえてきて、和輝はミーティングブースの壁の隙間からさりげなく声のする方を見た。
 
 尾形の様子や声色から未来に好意を持っていることはすぐわかった。ふたりの親し気な雰囲気に和輝の胸がザラリと毛羽立つ。
(こんなことなら、海営部長に無理を言って尾形を異動させるんじゃなかったな)
  
 しかも“婚活”という不穏な単語が飛び出しているではないか。

(婚活? 冗談じゃない。まったく俺の気も知らないで)
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