別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 時間を置かない方がいいだろうとその日の内に彼女の家を直接訪問したが、正解だった。

 引っ越し先に困っている事情を知った和輝は好機と捉え、一気に結婚に持ち込むことにした。

 拒まれることは想定内だったから“お試し結婚”などと理由を付けて期限を区切ることで同居へのハードルを下げた。少々強引ではあったがまずは物理的に確保できた。

 未来は最初の内“夫”としてふるまう和輝の距離の近さに戸惑っていたが、最近はずいぶんと慣れてきたようだ。

 共に眠り、食事をとり、たわいのない話で笑う今の生活はとても穏やかで満たされている。

 しかし尾形のように彼女に懸想する男もいる。油断はできない。早く正式に結婚し妻にしてしまいたい。

 未来を意識するまで結婚願望などなかった。大学で知り合った母に惚れ込んで猛アタックし、あっというまに学生結婚に持ち込んだという父のことも今一つ理解できないでいた。

「でも、今なら痛いほどわかるな……」

 思わず言葉が漏れた。

「どうかしたか?」

 目の前で父はくつろいだ様子でコーヒーを飲んでいる。やはりここで雑談しつつしっかり休憩を取るつもりでいるようだ。

(この人は押さえておくべきだな。軽く伝えておくか)
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