さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
8.御曹司、焦る
 和輝は日比野親子を自社のオフィスに案内した後、彼らと共に会食の場に移動していた。

 社長である父や国内法人営業部の関東営業1課の課長の佐野も同行している。
 今後日比野楽器の新オフィス構築は関東営業1課で担当するため、顔合わせと親交を深めるのが目的だ。
 日比野楽器からも移転プロジェクトのリーダーが出席していた。
 
 東京駅に近いホテルの高級和食店の個室で懐石料理を味わう。
 和輝は車で帰るつもりでアルコールはとらないでいた。
 
 日比野社長や加奈たちに卒なく話を合わせつつ、和輝は未来のことを考えていた。

(顔色がすぐれなかったが、大丈夫だろうか)

 突然未来と話をしたいと言い出した加奈への対応を頼んだ時、未来の表情は硬く顔色も良くなかった。
 朝はいつも通り元気な様子だったのにと心配になる。

 19時を過ぎたころ、場もだいぶ温まり砕けた雰囲気になったので和輝は未来に連絡を取ろうとさりげなく席を立つ。
 個室の外に出てスーツのポケットからスマートフォンを出していると、少し離れたところで佐野が電話をしていた。
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