別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～
　雪成は何かを考えるように長く骨ばった指を自らの頬にやる。
　仕草は優雅でその表情は艶のある大人の女性のものだ。

　やはり色気の有無に胸は関係ないらしい。

「私がユキちゃんみたいな色気出そうとしたら、周りの人たちビックリしちゃうよ。そもそも出す色気なんてどこにも隠れてないけど」　

　未来の話を聞いているのかいないのか、雪成は「ふーん、そうか。そうね」と何やらひとりで思案した後ニヤリと笑った。

「未来、イイこと考えた」　



　新年度になり会社では新入社員が入ってきたり社長からの年度経営方針が発表されたりと、年度の切り替わりに伴う新鮮な雰囲気に包まれていた。

　そんな中未来も仕事に励んでいた。経理的な決算は４月中までかかるため、何かと仕事が重なってくる。

　営業に挑戦しようと思っていた未来だが、決して事務を軽く考えていたわけではない。事務が支えているから営業が本職に集中できることを知っているからだ。

　そして営業が優秀で受注を取って来てくれるだけ事務方の仕事は増える。
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