別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 定時を過ぎても、まだ仕事が残っていた未来がパソコンに向かっていると、ひとりの男性社員に声を掛けられた。

「よう園田、今日は残業か?」

 彼は尾形(おがた)という海外営業部から営業職として国内営業部に入った未来の同期だ。

 彼の異動は未来が営業に出る機会を失った原因のひとつなのだが、異動早々大口の仕事を任されている彼を見ていると即戦力としてやはり必要な人材だったんだなと納得せざるを得ない。

「尾形くんがどんどん仕事取って来てくれるから、おかげさまで業務過多の日々よ」

「悪いなぁ、俺が出来る男なだけに」

 尾形は屈託なく笑った。お互いに軽口を言いあえるのも同期なのと、彼が明るく裏表のない話しやすい性格だからだ。

 入社研修の時に同じグループだったことがきっかけで知り合い、今も会えば気軽に話しが出来る関係だ。

 体育会系でガッシリとして背が高く、清潔感もある緒方は営業に向いており、海外営業部にいた時から優秀な成績を上げていた。そのため女性社員にも人気がある。

「とは言え、まだ分からない事ばかりだよ。今は細かいところは倉橋(くらはし)さんに同行して色々教わってる」
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