別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「いいなぁ。桜衣(さえ)さんと一緒にお仕事出来るなんて」

「本当にあの人すごいよな、知識も豊富だし、発想も相手の求めるもの以上のものを出してくるよ。俺ももっと頑張らなきゃと思ってる」

 尾形の声は力強いし疲れた素振りも見せていないが、それだけにが引き抜きかれた期待に応えようと無理をしていないか心配になる。

「そうやって誰かの良いところを素直に認めて吸収しようするのは尾形君のいい所だけど、最初から飛ばし過ぎるとまいっちゃうから、頑張り過ぎない方がいいよ」

 仕事に打ち込むのはいいことだ。でもそれによって追い込みすぎると、自分も、周りの人も不幸にすると未来は思っている。

「無理しないでね」

 未来が尾形を笑顔で見上げると、彼は一瞬呆けた表情をした。

「……そうだな。ありがとう。なぁ、この後飲みに行かないか?あー、ほらっ、あれだ。早速息抜きにさ」

 なぜか頬を赤らめ、早口で続けようとする同期の背後で凛とした声が聞こえた。

「尾形くん、まだHanontecさんへのプレゼン資料終わってないわよね」

 今話題にしていた女性が片手を腰に当てて立っているのを見て未来の声が弾んだ。
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