別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「あ、桜衣さんお疲れ様です!」

 彼女、倉橋桜衣は現在29歳で国内営業の第一線に立っている女性社員だ。

 長身で目鼻立ちがはっきりした美人でスタイルも良く、仕事も出来る上に気遣いが出来て優しいというありえない程欠点が無い先輩だ。

 未来は入社当時から桜衣を姉のように慕い、プライベートでも仲良くしてもらっている。

 入社以来事務職だった未来が、営業に挑戦しようと思ったのも『桜衣さんみたいになりたい』という彼女への憧れが切っ掛けだった。

「あ、やべ、そうでした! でも、粗い内容は作ってあるのでチェックして貰えますか? ミーティングルーム確保しときます」

 尾形は背筋をピシッと伸ばした。

「わかったわ。今日中にフレームだけ固めちゃいましょう。後から行くわね」

「はい、よろしくお願いします! 園田、仕事の邪魔して悪かったな」

 尾形はミーティングルームへ早足で向かっていく。その後ろ姿を桜衣とふたり見送る。

「桜衣さん、尾形くん無理してませんか?」

「確かにちょっと気合入り過ぎの所があるけど、彼、ちゃんと実力もあるから大丈夫よ。優秀な若手をこっちに出しちゃって海営は大丈夫かしらって思うくらい」
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