別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「桜衣さん、旦那さんから聞いてないんですか?」

 桜衣は現在、海外営業部の若き部長と婚約中で既に一緒に暮らし始めている。

 美男美女で仕事もできる孤高のカップルとして社内で超有名だ。
 ふたりで並び立っているところはお似合いで、その尊さに拝みたくなる。
 しかしここ数日部長の姿を見かけていない。

「……まだ、旦那じゃないけどね。そして現在オランダへ長期出張中」

「そうでしたか。きっと毎日のように桜衣さんのことを心配する電話が来てるんじゃないですか?」

 未来が言うと図星なのか少しだけ恥ずかしそうな表情で「ま、そんな感じかな」と答える桜衣。

 普段しっかりしている頼れる綺麗なお姉さんが照れると、めちゃくちゃ可愛いのだ。

 そんなところにも彼はメロメロなんでしょごちそうさまです、とにやけていると居心地が悪いのか桜衣は話題を変えてくる。

「本当は未来ちゃんとも営業で一緒に仕事したかったんだけど」

「仕方ないですよ。適材適所って言いますから」

「未来ちゃんは努力家だし、商品知識もあるし何より笑顔が可愛いから営業に向いていると思うわよ」

「やだ、桜衣さんったらぁ、照れるじゃないですか」
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