雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「……本当に、凛子さんて素敵な方ね。雪野さんも、お分かりになったでしょう?」
栗林専務の奥様が、感嘆の言葉を漏らしながら私に視線を寄せる。
「はい。本当に、素晴らしい方です」
誰もが認める、素敵な方で。
とても優しくて、温かい人――。
あの人なら、誰も疑問にも思わなかっただろう。
誰がどう見ても申し分のない人だ。創介さんの隣にいることにも、榊家の人間としても。
「雪野さんも、頑張ってくださいね。この先あなたは丸菱のトップになられる方の奥様なんですから。では」
栗林専務の奥様が私に笑顔を残して、ご婦人たちと連れ立って私から離れて行った。
きらびやかな会場の中で、宮川さんの着物を着た私は、ただ一人、孤独だった。
創介さんの妻としてここにいる以上、いろんな人に見られている。榊家の嫁としてあるべき姿は、堂々としていること。なのに、私の足は竦んで動けない。
しっかりして――。
こんなところで顔を歪ませるわけにはいかない。
ここを出るまでは笑顔でいなければ。
誰にどう見られているか分からない。
分かっているのに、こんなにも心が縮こまって逃げ出そうとしている。
――創介さん、私、頑張るから。
そう言ったのだ。こんなところで、へこたれている場合じゃない。
創介さんと結婚する時、何があっても頑張ろうと覚悟をして、創介さんの妻としてふさわしい自分になると決めた。
あんなに素敵な人を押しのけて、創介さんの奥さんになったのだ。
あんなにも素敵な人を――。
胸が苦しくなって呼吸が上手くできなくなって、咄嗟に胸を押さえる。