雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

 スマホのありかを探す。
 バッグが玄関に投げ出されたままになっていた。スマホを中から取り出し画面を見れば、おびただしい数の着信履歴が残されている。

 壁の時計を見ると午前四時を指していた。ということは、タイは今午前二時。深夜だ。寝ていたら、起こしてしまうことになる。

 電話を掛けようとした手が止まる。でも、この指が動かないのは、それだけが理由じゃない。上手く喋る自信がない。普通に話せる自信がないのだ。

 きっと、物凄く心配させてしまっている。画面をじっと見つめて、冷たいフローリングにぺたりと座り込む。乾ききっていない髪からしたたり落ちた雫が、酷く冷たかった。

 電話ではなく、メールを開いた。

”昨日は電話に気付けなくてごめんなさい。少し疲れて、寝てしまっていました。心配かけてごめんね”

送信ボタンをタップする。

 その直後にスマホが鳴り出して、びくっとした。創介さんからの着信だった。咄嗟にその電話に出るのを躊躇ってしまう自分がいた。

 深呼吸をしてその電話に出る。

「もしもし、創介さ――」
(雪野!)

切羽詰まったような声が飛び込んで来た。

(寝ていたって、本当か?)
「は、はい。心配かけちゃったよね。ごめんなさい」
(それなら、いいんだ。声が聞けたから安心した。もう、心配でどうしたらいいのか焦った。海外にいたんじゃ、本当に何もできないんだって思い知ったよ)

大きく息を吐くようにそう言う創介さんの声から、どれだけ気をもませていたのかと思い知る。

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