雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「本当にごめんなさい」
(いや、いいよ。それにしても、随分早く寝たんだな。どうした、そんなに仕事疲れたのか?)
あの会に出席したこと、創介さんにも伝えておいた方がいいのだろうか。どこかから耳にすることがあるかもしれない。
「仕事の後、講演会に呼んでくださって。それに出席して来たから、いつもより疲れちゃったのかも。だから、心配しないでください。創介さんももう寝てください――」
詳しく話す気にはなれなくて、それだけを伝えて話を切り上げようとした。
(講演会? 何の講演会だ?)
それでも、創介さんは話題を変えてはくれなかった。
「講演会と立食パーティーが一緒になったもので。栗林専務の奥様が誘ってくださって。急だったから、創介さんにも事前に話せなくて――」
(栗林……?)
「うん。とにかく、そういうわけだから。もう寝てください。そっちは深夜の2時でしょう? 今日の仕事に差し支えるから――」
(雪野)
創介さんの低い声に声を潜める。
(誘われたからと言って、必ず出席しなくちゃいけないわけじゃない。行きたくないものは行かなくていいんだ。とにかく、あまり無理はするな)
「栗林専務の奥様、困っていたみたいだからそれで行っただけなの。でも、創介さんの許可なく勝手なことをしてごめんなさい。これからはあまり行かないように……」
――あなたを公の場に出したくないって、創介さん、思っているのかも。
ユリさんの言葉が不意に頭を過った。
創介さんにとって本意じゃないことをしてしまったのかもしれない。いろんな光景が蘇って来て、思わず目を閉じる。
(……雪野?)
「あ、あの、もう仕事に出かける準備をしないといけないし、もう切りますね。おやすみなさい」
電話を切って、そのまま自分の膝に突っ伏す。
私、全然ダメだ――。
今にも折れそうな心を、それでもまだ、私はギリギリのところで必死に繋ぎ止めていた。
大丈夫。これからもっと頑張ろう。
出張から戻って来たら、創介さんにも相談して。
私にもできることを探していこう――。
自分が創介さんのために出来ることは何なのか。そのことを考え続けていた。