雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


 翌日の土曜日、創介さんの叔母様から突然電話があった。

(雪野さん、今日、お仕事お休みよね? 申し訳ないけれど、榊の家まで来てもらえる?)

創介さんの叔母様――これまでに二、三度お会いしたことはある。でも、それはいつも創介さんと一緒の時だった。

 結婚してから約二か月。創介さんの実家に出向くのは初めてのことだ。そのうえ、私一人で行くのも初めてのこと。どうしても緊張を覚えてしまう。
 でも、そこは見知らぬ場所じゃない。創介さんの家族であり、そしてもう私の家族でもある。私が誰より大切にしたい人たちだ。

「はい、うかがわせていただきます」

胸が苦しくなるような緊張を感じた自分を戒める。すぐに身支度を整えた。


 身支度をしながら、なんとなく身体が重いのに気付く。ここのところ、食欲がなくてきちんと食事をしていなかったせいかもしれない。

 それに、幹部婦人の会合の日から、あまり深い眠りにつけていなかった。

ちゃんとした姿で行かないと――。

今から睡眠を取り戻すことは出来ない。せめて食事でもとらなければと、無理に多めの食事をとった。


「お休みのところ、急にごめんなさいね」

お昼過ぎに創介さんの実家に出向くと、叔母様が直接出迎えてくれた。

「いえ。家に一人だったので呼んでくださって嬉しかったです」
「今、創介、海外出張中なんでしょう?」
「はい、そうなんです」

創介さんのお父様の妹にあたる方だ。二人で話したことはないから、どんな方か詳しくは分からないけれど、はきはきとした感じの叔母様だったことは覚えている。

少しずつでもいいから、創介さんの親族の方とも打ち解けて行きたい。

 通された居間には、お父様がいらした。少し見回してみても、お義母様の姿は見当たらない。

「こんにちは」

ソファに座る創介さんのお父様に挨拶をした。いつ会っても緊張する。一切揺らぐことのない表情は、それだけで威圧感がある。

「ああ」

ちらりと私に視線を寄こすと、すぐに視線は私から離れた。

「――さあ、座って」

創介さんのお父様の隣に叔母様が腰掛けると、私もその向かいに座るように促された。

 手土産に持って来たお菓子と一緒に、お手伝いさんが紅茶を運んでくれる。そのお手伝いさんが居間を出ると、再び三人だけになった。

 叔母様が私に身体を改めて向け、口を開いた。
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