雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「雪野さん、ここ最近、いろいろと大変だったみたいね」
叔母様の憐れむような表情が私に向けられた。
「私にも伝手があってね。いろいろと情報が入って来るのよ」
それは、どのことを言っているのだろう。
幹部の婦人のお茶会のこと? 講演会? それとも、その両方……?
嫌でも身構えてしまう。
「栗林夫人に、早速苛められたんだって? 栗林夫人に好き放題されて、本当に腹が立つわ。最近、増々大きな顔をするようになって」
叔母様が怒りをあらわにしているのを、私はただ見つめる。
「お母さんがまだ会長夫人として現役の頃は、榊の家の人間で統率出来ていた。でも、今はもうそんな元気もないから家に閉じこもってる。それでいて――」
そう言って叔母様がお父様にちらりと視線を寄こす。
「お義姉さんは、会社のことには一切関わらない……というか関われないでしょう? そのせいで今は、幹部婦人たちの中で栗林夫人が力を持ちつつある。こんなことになるなら、私も丸菱の人間と結婚しておくんだった。私ならあんな風に外様の人間に好き放題させないのに」
叔母様は、丸菱グループとはまったく関係ない会社の方とご結婚されたと聞いている。
「勝手に結婚相手を決めて出て行ったんだろう。今更、勝手なことを言うな」
「お兄さんにそんなことを言う資格があるかしら? 勝手なことをしたのはお兄さんでしょう? あんな人と再婚したりするから――」
「やめないか」
お父様が私の方を見て、叔母様を遮る。
「……それはともかく。
今、丸菱グループの中は混沌としてるのよ。その理由の一端にあなたと創介の結婚がある。一度雪野さんにきちんとお話しておきたかったの。創介がいたら雪野さんと話さえさせてくれないだろうし、創介がいない時を待っていたのよ」
やはり、私に何か話があって呼び出されたのだ。
「丸菱の幹部の婦人会でも、先日あった講演会でも、大勢の前で恥をかかされたんでしょう?」
その時のことを、叔母様は全部知っている――。
そう思ったらあの時の出来事がスライドのように蘇って、いたたまれなくなる。
「本当に……申し訳ありません」
榊の家の名を辱めてしまった。そのことには変わりない。咄嗟に頭を下げた。