雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「よりにもよって、こちらから縁談を断った凛子さんに助けてもらったって聞いたわ。どれだけうちを笑いものにしたいのかしら。凛子さんも凛子さんよ。余計なことをしなくていいのに――」
「宮川さんは、ただご親切から助けてくださったんです。すべて、私の落ち度で――」
「あなたがそんなことを言っている場合じゃないのよ」

つい言葉を返してしまった私を、叔母様が遮った。

「栗林専務は今、副社長の椅子を狙ってる。もちろんその最終目的は社長就任よ。丸菱グループの中で、栗林一派は、榊の血が入っていない一つの大きな勢力になってる。とにかく本流の榊の名を弱めたいの。それで、社内だけでは飽き足らず、社外では婦人が暗躍している」

それで、皆の見ている前で私を――。

「あなたが嫁いで来たところは、そういう世界。女達には女達の勢力図がある。それは結構侮れないものなのよ」

私が経験したことの事の重みを思い知る。

「創介の祖父も祖母も私も、そしてお兄さんも、みんな創介に社長になってもらいたいって願ってる。現在の社長夫人が丸菱の中で役割を果たせていない以上、うちの存在感を示すためには創介のお嫁さんになる人にそれなりの人が必要だった。総理の娘が嫁だったら、栗林夫人は今のような態度を取れたかしら?」

叔母様の言葉は、決して私を貶めるようなものじゃない。
理路整然としたものだった。
だからこそ、聞いているのが辛くなる。

「それに。栗林は、うちが宮川家との縁談がなくなったと知った時、本当は娘を創介のところに嫁がせたいと思っていたのよ。でも、創介はあなたを迎え入れた。それで余計に敵意を剥き出しにしてる」

私では到底知る由もない事情が渦巻いていたのだ。

「創介は、ただでさえ訳のわからない関連会社になんか出向になって、出世に遅れが出てる。それなのに、創介が社長職を狙う時期になった時、社長の椅子に栗林専務が座っていると面倒なのよ。それは、分かるわね?」
「はい……」

叔母様の話から、それはなんとなく推測出来た。

「ポスト争いって、本当にドロドロとして熾烈な争いなの。妻まで巻き込むほどね」

膝の上で握りしめた手のひらを、じっと見つめる。この会話の行き着く先を想像しそうになって、思わず強く握り締めた。

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