雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「雪野さんは覚悟を決めてうちに来てくれた。でも、実際に結婚したからこそ分かったこともあるんじゃない? それであなたが逃げ出しても、誰も責めたりしない。もちろん私たちも」
「私は、大丈夫です。だから……っ」

ふるふると唇が震えてしまいそうになる。

「――あなたから、創介に離婚を切り出してくれないかしら」

無情にも、私の震えた声はかき消された。

「それがお互いのためになると思うのよ。あなただけじゃなく、創介にとっても」

――創介にとっても。

その言葉がこだまする。

分かってる。
私のような人間が創介さんの妻であるせいで、どういう風に周囲から見られるのかここ連日の出来事で思い知った。

創介さんにも迷惑をかけてしまうこと。
それも分かる。
榊家にとっても、創介さんの将来にとっても、不都合だということ。それも分かってる。

それでも――。

「創介は自分からあなたを手放したりしない。あなたに対して責任もある。でもね、お互い新しい道をいくらでも見つけられる。あなたにはあなたに相応しい人がいる。創介には創介に相応しい人が……」

――雪野、おまえは本当に可愛いな。

そう言う時、いつもは鋭い目を細めて私を見つめてくれる。

――何より、おまえが大事だ。

創介さんの表情、声、私の頬に触れてくれる時の指の感触、そんなものばかり思い出す。

――雪野。

「……私は、離婚なんかしたくありません。創介さんと別れたくないです」

零れる涙に構わず、私はそう訴えていた。

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