雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
神原さんとの時も、
丸菱の幹部婦人の会の時も、
ユリさんと話した時も、
そして、先日の講演会のことも――。
それぞれに、辛いことだった。傷ついたりもした。
でも、そのどれよりも辛い。苦しくて、胸が張り裂けそうで。
周囲の人たちじゃない。創介さんの家族から、相応しくないと言われたこと。その事実は重い。
結婚しても、それは何も変わらなかったのだ。
必死に懸命にすがりついていたものが手のひらから落ちて行くみたいに、私から少しずつ何かが消えていく。
ずっと張り詰めていた心の中の何かが、ぷつんと切れた気がした。
私って、こんなに弱かったんだ――。
不意に足がよろけて、榊家の豪邸を囲む塀に手を付く。そのまま身体から力が抜けて、壁に寄りかかった。
私が甘かったのだろうか。
もっと、簡単なことだと思っていたのだろうか。
そんなつもりはなかった。
私なりに悩んで苦しんで考えて、それでも創介さんと生きて行こうと決めた。
それは決して軽い決意じゃない。
お父様の秘書の方から手切れ金をもらった、あの時。
あの時、あのまま別れていれば、良かったのかな――。
あの時、確かに私は創介さんから離れることを決めた。それが創介さんにとっていいことだとそう思ったのだ。
それが、やっぱり正解だった――?
でも。
もう、戻れない。
あの日の私には戻れない。
あの時出来た決断を今はできない。
もう創介さんから離れるなんて出来ない――。
「――雪野さん、大丈夫っ?」
息を弾ませた声が聞こえる。
おもむろに振り返ると、そこには、榊君――創介さんの弟の榊君が息を切らして私の元へと駆け寄って来る姿があった。