雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
あんな、みっともなくて惨めな姿を見られていた――。
必死で、どう取り繕うか誤魔化すか頭の中で考えても、虚しさばかりが襲って来る。
あんな話を聞かれていたのなら、何をどう言ってももう誤魔化すことはできないだろう。
喉元まで言葉が込み上げて来ても、どれも意味ないもので押し戻される。榊君もただ眉間にしわを寄せて厳しい表情をしたまま、それ以上何も言わなかった。
沈黙が横たわる車は、私の住むマンションの車専用の地下エントランスへと入って行き、来客者専用駐車場にとめられた。エンジンを切ったのに、榊君はハンドルから手を離そうとはせずただじっとしている。
「……送ってくれて、ありがとう。じゃ、じゃあ――」
これ以上何かを言われる前に。
そう思って、助手席のドアに手を掛けた。
「兄さんは、一体何をしてるんだ?」
低い声が私の背中に放たれる。でも、その声はまだ感情を押し殺しているような声だった。
「君がここまで追い詰められているというのに、兄さんは何をしてる? 君一人を辛い目に遭わせて!」
「創介さんは悪くない! 創介さんは何も知らないの」
車から出て行こうとした身体を榊君に向けて、気付けばそう言っていた。
「知らなければいいっていう問題じゃない。君と結婚する時点で、君が苦労することになることは分かっていたはずだ。兄さんは僕に言ったんだ。ちゃんと君のことは守るって。なのに、全然守れてないじゃないか!」
「創介さんのことを悪く言わないで!」
「――君には悪いと思ってる。本当なら、僕の母だって君を支えるべきなのに。僕の母はそれを出来ない。もともとあの家で大した力は持っていないし、それに――」
榊君が苦しげな顔をして私を見る。
「母さんは兄さんを憎んでいるから。兄さんの妻である君に、多分、自ら関わることはない」
ぐらりと目の前が歪む。
本当はもうさっきから、身体に力が入らなくて。座っていなかったらしゃがみ込んでしまっていたかもしれない。