雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「……榊君が謝ることじゃない。お義母様の気持ちは分かっているつもりだから。確かに、いろいろ大変なこともあるけど、それは全部覚悟していたこと。少しずつ、経験していけば慣れて行くと思う。榊君は気にしないで」
強がったままでいさせてほしい。
これ以上、弱った姿を誰かに見せるのは耐えられなかった。だから最後に力を振り絞って笑ってみせた。
「今日は、送ってくれてありがとう。じゃあ、また――」
今度こそドアノブに手を掛ける。
「僕も、叔母さんの意見に賛成だよ。やっぱり、君みたいな人はこんな家に入るべきじゃない!」
榊君の方には振り返らずに車から降りようとした時、切羽詰まったような腕が私の肩を掴んだ。
「優しい君が、そんな風に少しずつ壊れて行くのを見たくない。そんな姿を見るのは、僕の母で十分だ」
どうして、みんな、だめだって言うの――?
「私は、壊れたりしないよ。創介さんが、私といて幸せだって思ってくれるなら、ここにいる意味がある……っ」
榊君に放った言葉は、半分は自分に言い聞かせたものだった。
もう、それしか私を支えるものはない。もう他に何も、私がここにいる理由なんてない。
誰に何を言われても、
創介さんが私といて幸せを感じていてくれるなら、ここにいられる――。
ただ、それだけだ。ドアを開けて、車から飛び出す。