雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「――理人、どうしておまえが、ここにいる?」

地を這うような低い声に、身体中が強張る。
こんなに近くにいるのに、創介さんが遠く感じた。二週間前、笑顔で見送った時と全然違う。

「そんな風に睨まれる筋合いはないよ。弱り切っていた彼女を送って来ただけだ。それに――」

険しい表情をした創介さんに、榊君が一歩近づく。

「こんな風に僕が雪野さんを助けるのが気に入らないなら、もっとちゃんとしろよ。こんなに彼女が追い詰められるまで放っておいて。あんたの言う守るって、なに?」
「――なんだと?」
「榊君、やめてっ!」

やめて。創介さんに、何も言わないで――。

強い眼差しで叫んだからか、榊君はすべてを飲み込むように顔を逸らした。

「……雪野、来い!」

創介さんが私の腕を掴み上げ荒っぽくドアの鍵を開けると、私を部屋に押し込んだ。

「榊君、家まで送ってくれただけなの。本当に、それだけで」

掴んだ手の力が強くて痛い。閉じた扉に肩を強く押し付けられた。

見上げた先には、久しぶりに見る創介さんの顔。間近に見る創介さんの表情は、酷く歪んでいた。
それでもまだ私は、取り繕おうとした。

「出張から帰って来るの来週のはずなのに、どうしたんですか? 帰って来るのなら連絡してくれれば――」
「何があった。何があったか言え!」

創介さんの身体から発せられる怒りに、身が竦む。

「理人には言えて、俺には言えないのか? 俺には、頼れないのか?」

違う。違うのに、どうしたらいいのか分からなくて、頭を何度も横に振る。

「どうして、俺に何も言わなかった? どうして黙っていたんだ!」

苦しげに吐かれた言葉に、息が止まる。

それは、どういう意味――?

創介さんが私の両肩を強く掴んだまま、その頭を俯かせた。創介さんの肩が微かに震えている。

どうして、創介さんは――。

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