雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「……昨日の明け方、雪野と電話で話した時、様子がおかしかったから神原に調べさせた」

それは、一体――。

ドクドクと心臓の鼓動が加速度的に早くなる。

「講演会でのことも聞いた。それに、幹部婦人たちとの会合でのことも――」

すべてが消えてなくなるような恐ろしい恐怖が身体中を駆け巡る。

「どうして、黙っていた!」

その声は切り裂くような怒号なのに、私を見つめる目はとても苦しそうだった。

「ご、ごめんなさい。創介さんに迷惑をかけるようなことしちゃったのに、報告しなくてごめんね。ごめんなさい」

創介さんの妻として恥ずかしい自分。憐れむような目で見られた惨めな私を知られてしまった――。

声が震えてしまう。

「俺のことなんかどうでもいい。おまえが辛い思いをしたんじゃないのか? 嫌な思いをしたんだろ」

まさか――?

嫌な予感がして、身体から血の気が引いて行く。

「……それで? それで、創介さん、出張中なのに、早く帰って来たの……?」

愕然とした心が身体を冷たくして行く。

「大事なプロジェクトは……?」

自分のしてしまったことの大きさに混乱する。そんなこと、創介さんにさせるつもりなかった。

私がいるから。私だから――。

創介さんはこんな風に仕事の途中で帰って来なければならなくなった。

もし、創介さんの奥さんが宮川凛子さんだったら――。

耳にしては傷付き、その度に跳ね返そうとして来た言葉。
それが全部、線になって繋がって私の前に突きつけられる。

――仕事のことでも大変なのに、あなたのことも四六時中心配していなければならない。

「雪野!」

――苦しむあなたを見ていなければならない創介も、苦しいんじゃないかしら?

「創介さん、そんなの」

――宮川凛子さんほどの人を断って。
――あなたと結婚したせいで、関連会社になんか出向になった。

耳鳴りのようにいろんな人の声が重なって膨らんで、私の頭を埋め尽くす。
それを振り払いたくて頭を抱える。

「雪野……っ」

痛いほどに掴まれていた肩から手のひらが離れる。次の瞬間、苦しいほどにきつく抱きしめられた。

「頼むから。俺に、全部話してくれ」

大きな手のひらが私をかき抱く。
手も、腕も、目一杯身体を締め付けるから、呼吸もままならない。
創介さんの香りに包まれているのに、私の身体は恐怖に震えて動けなかった。

「おまえが、この家で一人何を思っていたのかって、それを考えたら居ても立っても居られなくなった」

私の存在を確かめるように抱きしめるから、創介さんの苦しみが伝わって来るみたいで辛い。

「雪野、おまえの苦しみはおまえの口から聞きたいんだ」

創介さんの大きな身体に包まれているのに、哀しくて哀しくてどうしようもない。どうしようもなく哀しみだけが込み上げて来る。

「どうして、何も言わない……?」

絞り出すようにそう言ったかと思うと、何も言えずにいる私に苛立ったように私の頭を鷲掴むと唇を塞いだ。

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