雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

 その日深夜まで、仕事の道筋を調整し、早朝の便で日本に向かった。
 飛行機の中で、雪野のことばかり考えていた。どうしてだろう。こういう時に限って、雪野のはにかんだ笑顔ばかりが浮かんでくる。

『創介さん』

雪野の笑顔は本当に優しげで、それを見ているだけで自分まで良い人間になった気がして。

『少しずつ頑張ります。だから、創介さんも、私に足りないところを見つけたら言ってくださいね』

そう言えば、神原に会わせたあの日、そんなようなことを雪野が言っていた。それは、神原に何かを言われたからだったのだ。改めて考えれば、気付くことばかりだ。

 あの後、雪野が珍しく大量に買い物をしていた。

俺に釣り合うようにって、考えたのか――。

雪野なりに努力していたんだろう。俺に迷惑をかけないように、恥ずかしくないように。少しでも、この世界になじめるように。

バカだな――。

バカは、俺だ。もっとちゃんと考えてやればよかった。

もっと、もっと、もっと……。

また、雪野に無理をさせていた。

一人で耐えないでくれ。一人で苦しまないでくれ。俺にも全部分けてくれ――。

そうでなければ、俺は何も知らないままで、雪野の苦しみも知らずに、俺だけが雪野といられる幸せを感じて。少しずつ擦り減っていく雪野に気付かずに、そしていつか、気付いた時には……。

雪野は俺から去って行く――。

導き出された答えに身体を恐怖が貫いて行く。


 一睡も出来ずに到着した空港から、自宅マンションへと急いだ。そこにあったのは、会いたくてたまらなかった雪野が、理人に抱き締められている姿だった。

 俺といることに疲れて、擦り減ったその心に優しい男が入り込んで。ふっと、何かが切れてしまって、身を委ねてしまったら。

そして、それが、理人だとしたら――。

『こんなに彼女が追い詰められるまで放っておいて。あんたの言う守るって、なに?』

まさに、俺が悔やんでいたことを言い当てられた。そして、雪野が追い詰められていることを、理人は知っていた。そのことが何よりも衝撃だった。その事実に我を忘れた。

 俺は、最低だ。

こんな男だ、雪野が逃げ出したくなるのも当然で――。

あまりに激しい鼓動でひりつくように胸が痛い。

 思わず、雑踏の中で立ち竦む。俺の横を、途絶えることなく人が通り過ぎて行き交っていく。


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