雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
結局、雪野を見つけられないまま、気付くと自宅マンションにたどり着いていた。建物を見上げてみれば、どの部屋もほとんど明かりが消えている。一体、今、何時なのかも分からない。
もうすぐマンションのエントランスが見えて来る。マンションのエントランスの前には小さな庭園が整備されている。そんなところも気に入って、このマンションに決めたのだ。二人で暮らし始めた時の喜びが、そのまま胸の痛みとなって返って来る。
雪野の性格を考えたら一番可能性は低いだろうと思ったが、もう当てがない。冷たくなって上手く動かない手をズボンのポケットに入れ、スマホを取り出す。そして、雪野の実家の電話番号を表示させた。雪野の家族に心配をかけることになる。でも、もう、他に俺が頼れる相手はいない。
走り続けて力を失った脚を引きずるようにして歩きながら、電話を掛けようとした時――。
薄暗い道路だ。一瞬、幻かと思った。でも、確かに、この目に映っている。酷く疲れたように、道路の向こうから躊躇いがちに歩いてくる姿が視界に入る。
「雪野っ!」
身体全体から力が抜けてしまいそうになりながら、その名前を叫んでいた。
「……創介さん」
夜の闇に今にも消えてしまいそうなか細い声。本当に消えてしまう前に捕まえたくて、雪野の元に走った。
さっきも見た薄いブラウス一枚で、ほどけた髪が風に揺れて。着の身着のままで、手には何も持っていなかった。
心細そうな歪んだ表情で、俺を見上げる。
無我夢中でその身体を抱きしめる。腕の中に閉じ込めて決して逃さないようにきつく抱きしめた。
「雪野……」
怖くて張り詰めていた身体と心が一気に緩みだす。緩みだしたせいで、目頭までもが熱くなる。熱いものが溢れて、苦しくなる。
抱き締めた身体は強張り、震えていて酷く冷たい。あまりの冷たさに、またも溢れて来る。
「ごめんなさい……。創介さん、私――」
「いいんだ。いいんだよ」
掠れて弱々しい声に、身体中が締め付けられて。腕の中で肩を震わせる雪野の背中を必死にさする。