雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「苦しくなって、気付いたら、家を飛び出してたのに、どこにも行く場所なんてなくて……」
嗚咽と共に声を吐き出すと、雪野が堰を切ったように泣きじゃくった。腕の中で泣く雪野に苦しくなる。苦しい分だけ、雪野の身体を抱きしめた。
確かにこの腕の中に雪野がいる――。
それが現実だと自分に分からせたくて、きつくきつく雪野の身体を腕の中に閉じ込めた。雪野が俺の胸のシャツを強く握り締める。
「創介さんのことばかり、考えるの。離れた方がいいのかなって、そう思うのに、私が帰りたい場所は、ここしかなくて、結局帰って来ちゃっ……」
「雪野――」
嗚咽の合間に必死に吐き出される雪野の声も涙も切なくて、胸を締め上げて息苦しくなる。
「ごめんなさい。創介さん、ごめんなさい……っ」
「もう、謝るな。俺の方こそ、もっと早くに見つけてやらなくて悪かった」
雪野は肩を震わせて俺の胸に顔を埋めて。雪野から零れる涙が俺のシャツを濡らす。
一人でこの夜空の下、彷徨っていたのだろうか。
意思とは別に目から溢れるものが熱くて、冷え切った俺の頬に熱を差す。それが涙なのだと、あとで気付いた。
「……創介さん、身体、冷たい」
少し落ち着いた雪野が、俺の身体を確かめるように抱きしめ返してそう言った。
「ああ……。でも、雪野の方がずっと冷たいだろ」
そっと雪野の肩を掴み俺の身体から離し、雪野の頬に手のひらを添える。雪野の顔を覗き込んだ。涙に濡れた雪野の顔にまたも胸が痛むけれど、それでも、こうして触れることができる。もう、どこにも行かせたりしない。
「創介さん、私のこと探してくれたからだよね……。ごめんなさい」
また俯きそうになる雪野の頬をぐいっと上げる。そして、その真っ赤な目を見つめた。
「雪野、帰ろう」
その言葉に、雪野の目は一瞬揺れたけれど、「うん」と頷いた。
雪野の冷たい手を取る。そして、きつく指を絡ませてその手を引いた。二人で暮らす部屋に、雪野を連れ帰る。