雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「創介さん、本当にごめんなさい」
腕の中で身動き一つしない雪野が、ぽつりと言葉を零した。
「……出張、まだ終わってないのに――」
それを気にしていたのだろう。
「大丈夫だ。ある程度の目途は付けて来た。あとは最終的な事務的作業だけだから。おまえが心配する必要ない」
そう伝えてから、雪野を抱きしめる腕に力を込めた。
「そのままでいいから、聞いてくれ」
まだ少し濡れた髪に頬を寄せた。慈しむように、その前より細くなった身体を抱きしめる。
「俺の中には一つの道しかない。他の道なんて存在しないんだ」
雪野に分からせたい。もう二度と、その心を揺らがせないように。
「雪野と一緒に生きて行く。それは、何があっても揺らがない」
雪野が息を潜めている。それが身体越しに伝わる。
「雪野を失ったら、俺は俺でなくなる」
丸めた背中を労わるように触れる。言葉でも、身体でも、すべてで伝えたい。
「おまえが、俺のためにと離れて行ったところで、俺は抜け殻になるだけだ。この先、社長になろうなんて気力なんかあるはずもない。だから、"俺のために別れる"ということ自体成り立たない。より俺を苦しめるだけだ」
雪野が肩を強張らせる。
「それだけは、誰に何を言われても忘れるな」
「創介さん……っ」
じっとしていた雪野が何かを堪えるように声を上げた。
「辛い目に遭わせてごめん。ちゃんと守ってやれなくて悪かった。一人でずっと、心細かっただろう」
雪野が受けた仕打ちを知った時、本当はこうして優しく抱きしめてやりたかった。傷付いて疲れた心を、包み込みたかった。