雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「……私、創介さんと結婚するのに、ちゃんと覚悟していたつもりだった。でも、結婚して、いろんなことを見て知って、全然うまくできなくて。やっぱり私じゃだめだったんじゃないかって思って。私といることで、創介さんの足枷になることが、辛かった……っ」
――やっと。
やっと雪野の心の声を聞けた気がした。
「――おまえとの結婚のせいで、俺が今の会社に出向になったと聞いたんだよな?」
雪野が俺を見上げて、目を見開く。
「凛子さんのことも、いろいろ言われたか」
目から大粒の涙を流し、すぐにその目を逸らした。でも、雪野の手のひらがぎゅっと俺の腕を掴み声を漏らす。
「……宮川さん、講演会の場で、私を助けてくれたんです。本当に、素敵な人でした。とっても優しくて、温かい人で……」
雪野が声を詰まらせる。細い肩が痛々しく震えるから、その肩を胸に引き寄せた。
「そうだな。凛子さんはいい人だ。でも、雪野だって誰にも負けないくらい綺麗な心を持ってる――」
「違うんです。私は、そんな綺麗な人間じゃない。あんなに良くしてもらったのに、私は、ただ辛かったんです……っ!」
それはもう雪野の叫びだった。
「感謝よりも、辛いと思う気持ちの方が大きかった。私は、宮川さんがいい人で苦しかったんです。何もかもを持っている宮川さんを羨みました。周りの人が、『どうして宮川さんじゃないのか』って言う気持ちが分かるから、苦しかった。いっそ、創介さんが宮川さんを選んでくれていたらって、そんなことまで思いそうになって……っ」
雪野が俺の胸に強く顔を押し付けて、感情のままに言葉を吐き出す。
雪野がうちに秘めていた苦しい思い。
凛子さんと自分を比べるなんて、馬鹿げている――。
でも、そうさせてしまうほどに追い詰められていたのだ。
「本当の私は、そんなことを思ってしまうような人間です。こんな私、創介さんには知られたくなかった……」
泣く雪野の髪に指を差し入れる。
この愛おしくて痛々しい存在を、どうすれば癒せるのか。
そのまま頭を支え、雪野の顔をじっと見つめた。
「私、自分はもっと強い人間だと思っていた。でも、本当の自分は、全然違った――」
「俺は雪野がいいんだ。何を聞いたって揺るがないって、言っただろう?」
雪野が涙を流しながら表情を歪める。