雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――今日は、かなり無理させたな。悪かった」
バスタブの端で雪野が黙ったまま小さくなって、膝を抱えて座っているから、その後ろから恐る恐る抱きしめてみる。
ちゃぷん――。
湯が揺れる音ともにその身体を引き寄せたけれど、雪野は小さくなったままだ。膝に顔を埋めて、雪野は何も答えてくれない。
露わになったうなじと背中が俺の目の前にある。そのうなじにも、背中にも、たくさんの痕が散っていた。
「おい……。怒ってるのか……?」
いくらなんでも、やり過ぎたか――。
今頃不安になる俺も、どうかと思う。
「許してくれ。今日は、雪野があまりに可愛いことを言うから。あんな風に求められたら、理性なんか全部吹っ飛んで――」
焦って、雪野の小さくなった身体を抱きしめる。それでも不安が膨らんで、雪野の表情を確かめたくてその身体をこちら側へと反転させた。
「雪野……?」
「私も、です。自分で自分が怖い」
怒っているのかと思ったら、雪野が神妙な顔をして俯いている。湯の中から少し出ている肩までも、赤くなっていた。
「どんどん自分が、変わって行くみたいで。あんな風に、乱れてしまう自分が、自分じゃないみたいで怖いです」
それは、雪野らしい思考だと思う。でも――。
「俺は、そんな風に雪野が変わって行くのは嬉しいよ。俺がそうさせているのかと思うと余計に」
怒っているわけじゃないんだと安心したせいで油断していると、雪野がキっと俺を可愛く睨みつけて来た。
「でも、やっぱり、今日の創介さんはいつもと違ってた。すごく――意地悪だった。こんなに、いっぱい……。私、外、歩けないです……っ」
雪野が自分の肩を抱きしめる。
確かに。背中だけじゃない。首筋、鎖骨、胸元、肩……雪野の肌に、青紫の跡がいくつもある。
まともな思考なんて吹っ飛んで夢中だったとは言え、俺は一体、どれだけ雪野の身体を貪っていたんだ。
でも、それはやっぱり、雪野を愛し過ぎているからで。仕方がない。抑えられないものは抑えられない。
今だって、もう――。
雪野の背中に手を回し、俺の方へと抱き寄せて。そのまま、露わになっている首筋を唇で触れる。
「見せてしまえよ。俺に愛されてる証拠なんだから」
「な、何言って――や……っ、そ、そうすけさん、ちゃんと反省してますか?」
首筋から上へ上へと舌を滑らせ、耳たぶを唇に含む。
「反省? ああ、してるよ。当分、自重する」
「そ、創介さんっ」
雪野の濡れた肌を手のひらで触れる。それにぴくりと反応するのに気付く。
「ここも、ここも、白い肌に浮き出て、綺麗だな」
自分で付けた痕に唇を当てる。