雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
出社して、出張先から戻って来た社員たちを常務室に迎え、報告を受けた。
「常務の作ってくださった道筋で契約を取りまとめることが出来ました。これまで固定客としか取引をしていなかったので初めての試みでしたが、販路を広げて行く上でもこれは大きな一歩になりますね」
担当課長の一通りの説明が終わると、直接現地に入っていたプロジェクトリーダーの社員が興奮したように言った。
「それが、今回の一番の目的だ。守るだけではいつか必ず沈んでいく。これを試金石として、この先開拓できそうなエリアを調査しておいてください」
「はい。承知いたしました」
無事に契約も成立した。とりあえず、そのことにホッとする。
「今回は、途中で帰国して申し訳なかった」
最後に一言詫びた。
「いえ、とんでもないです。私たちは、常務の指示で動いていただけで。ほとんど常務に取りまとめていただいたようなもなです。それに、本家の榊の名前はやっぱり強いですね。こちらこそ、ありがとうございました」
そう言って頭を下げると、社員たちは部屋を出て行った。
仕事というものは前例踏襲しているのが一番楽だ。特にここ、丸菱テクノロジーはその傾向が強い。新しいことをさせるのには、それなりの労力がいる。
当初は難色を示していた社員が、こうして最後までやり遂げ達成感を持ってくれたのは今後にも生きてくるだろう。
「お疲れ様でございました。このたびの契約は、これまでの丸菱テクノロジーでは考えられない、大きな契約になるはずです。今年度の売り上げにも大きく影響するでしょう。さすが、榊常務でいらっしゃいます」
窓の方に向けていた身体を、神原の方へと向ける。
「まあ。そんなにのんびりもしていられなくなったからな」
いつまでもここで呑気にしていたら、本社に戻るのが遅くなる。
少しでも早く結果を出して、認められなければ――。
俺がいるべき場所に戻らないと、誰一人黙らせることができない。
「――それで、頼んであった件、どうなった?」
「はい。それを本日、報告させていただこうと思っておりました」
神原が、俺のデスクにA4の紙を差し出した。