雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「常務のご想像の通り、竹中常務以外の幹部は、特別、栗林専務に肩入れしている様子はありません。今、本社内では、栗林派、中立派、榊派のおおよそ三つの派に別れている状態だと思われます」
「まあ、そうだよな……」
それで、一番鬱陶しく問題なのが、栗林派だ。
「『いつまでも世襲のようなことをしていたら、榊はいずれ衰退する』と触れ回っては、ご自分の支持者を増やそうとしていますからね。栗林専務は、入社当時から常に榊社長をはじめ榊出身の方を意識していたそうですから」
神原は、ここに来る前は栗林の秘書をしていた。以前仕えていた上司のことをこんな風に報告することに葛藤があるかもしれない。
ふとそう思ったが、口にするのはやめておいた。使えるものは何でも使う。
「それで、こちらが、栗林派とは距離を置いている幹部のリストです」
デスクに置かれたその紙を手に取る。
「――助かった。あとは、こちらでやる」
「やはり、社長のお力をお借りするのですか……?」
神原がうかがうように聞いて来た。
「それが一番合理的でかつ確実だからな」
正直なことを言えば、できれば頼りたくない相手ではあるが、飛ばされて出向させられているような俺にあまり力はない。
でも、父親は丸菱の社長だ。いくら、栗林が喚こうと、奴にとって上司であり社長であることには違いない。