雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
社を出てから直接、成城にある叔母の自宅に向かった。
理人から話を聞いた日からずっと、叔母に会わなければと思っていた。
その口を黙らせるために――。
「創介がうちにわざわざ来てくれるなんて、珍しいこともあるのね」
叔母がそう言いながらも笑顔で出迎えた。
子どものいない叔母が甥である俺を可愛がっていたのは知っていた。そして、榊の家から出て嫁いで行ったからこそ、丸菱に思いがあるのも知っている。
でも、俺のいないところで雪野に連絡を取るなんてことをするとは思っていなかった。そもそも、叔母と雪野が顔を合わせたのは、二回程度。
その程度の面識で、直接連絡を取るとは――。
叔母までもが出て来るとは、誤算だった。
「今日、東堂の叔父さんは?」
叔母の夫は、大手メーカーに勤めている。そこそこの役職には就いているということだったが、そんなにも出世欲はないのだといつだか叔母が零していた。
「ああ。海外視察よ。まあ、視察という名の旅行だけど」
叔母のあとに続いて廊下を歩く。成城にあるこの家は、俺の実家ほど広くはないが、夫婦二人で暮らすには十分な広さだ。淋しささえ感じる。
「もっと早い時間に来てくれればよかったのに。お昼、一緒に食事したかったわ。ああ、でも、夕食は? ここで食べて行きなさいよ」
俺の方を振り返りながら、叔母が弾んだ声で俺に言う。
「――いや。家で、雪野が待ってるから」
そう告げると、叔母の表情から笑みが消える。
「あら、そう」
扉の奥にある居間に通され、ソファに腰掛ける。数年前に来た時とほとんど変わらないその部屋で、すぐに口を開いた。
「――今日は、別に遊びに来たわけじゃない。叔母さんと話がしたかったからだ」
正面に座る叔母は、先ほどまでの機嫌の良さはどこへ行ったのか、その顔にほとんど表情はない。