雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「先週、雪野を呼んだんだって?」
「……やっぱり来てくれた理由はそれ? わざわざあなたがいないときに呼んだのは、黙っておいてってことだったのに。雪野さん、早速あなたに報告したの? 『何も言いません』なんて言ってたのに、口ばかりじゃないの――」
恨み節を聞いているのも耐え難くて、その言葉を遮る。
「雪野から聞いたんじゃない。理人だよ。雪野は何一つ自分から話そうとはしなかった」
「……理人?」
叔母が顔をしかめた。
「叔母さんと雪野の会話を聞いたらしい」
雪野が帰って来たと理人に連絡した時に、了解をとっておいた。
『叔母さんに直接話しに行く。その時、おまえから話を聞いたと言っていいか』と理人に聞いたら『別に構わない』と言われた。
どうせ、僕は叔母さんにとってどうでもいい人間だから――と。
「本当に、親子揃ってろくでもないわね。人の話を立ち聞きするなんて――」
理人たちの話題になると、よりその表情を歪ませて行く。
「ろくでもないのは、どっちだ?」
叔母をじっと睨みつけた。
「俺のいないところで、立場の弱い雪野を呼びつけて一方的に別れを迫る。それはろくでもないことじゃないのか?」
「それじゃあまるで、私が意地悪な人間みたいじゃない。私はただ、あなたと雪野さんのことを思って助言しただけよ!」
甥が可愛いのか丸菱が大切なのか。どちらにしても、その感情の向かう矛先が間違っている。
「創介は知ってるの?
雪野さん、大勢の前で恥をかいたのよ。それは、そのままうちの恥になる。これからトップに立たなきゃいけない創介にとってもマイナスに働くのよ。
こんなことはこれからも起こる。雪野さんが奥さんである以上、創介までもが恥ずかしい思いをするのよ。それがいいことだとは思えない。
雪野さんだって可哀想だわ。あんな風に晒しものみたいにされて。あなただって、そう思うでしょう?」
自分のしたことを正当化するために、叔母はひたすらに捲し立てる。
「真面目に聞いてちょうだい。
雪野さんの噂を聞きつけて、私のところにいいお話が来てるのよ。
三木商事、あなたも知っているでしょう?
そこの副社長のお嬢様。私、奥様とお友だちでね。それで、是非にって。一度結婚したとは言え、子供もいないし、短い期間の結婚なら気にしないって言ってくださってるのよ。
もう、宮川さんレベルの方を迎えるのは難しいかもしれなけれど、三木商事の次期社長のお嬢様なら恥ずかしいということはないわ。どうかしら」
俺は黙ったまま、冷ややかに叔母を見つめていた。
「……まあ、確かに、あなたのお相手には不足かもしれないわね。だったら、慶心大の教授のお嬢様はどう? あなたの母校だもの。いいと思うわ」
何も答えない俺に、叔母が躍起になって言葉を吐き続ける。
「それでも気に入らないって言うなら、私、他にどなたか良い方がいないか探してみる……」
「――もう気が済んだか?」
「え……?」
叔母がようやくその口を閉じた。